スペインタイル紀行②【バルめぐり タブラオ堪能 マドリードの夜は長い】

当社代表・山内直幸がタイムス住宅新聞で連載していたコラム「スペインタイル紀行」を、
ホームページ上で再掲載いたします。
スペイン各地を巡りながら出会ったタイル文化の魅力を、ぜひお楽しみください。

老舗タブラオ「ビジャローサ(Villa-rosa)」外壁のタイル画


一流のフラメンコ


目の前で踊っているダンサーの足が見えない。時差ボケだろうか?重いまぶたをこすり、ジーっと目をこらす。マドリードには「タブラオ」と呼ばれる、フラメンコショーが見られる酒場やレストランがいくつもある。ショーは夜9時ごろから始まり何組かのダンサーが出演して真夜中まで続く。ベテランは最後に踊る。バイラオーラ(踊り手)の両足がダダダン、ダダダンとステージの床をたたき続け、僕の心臓に響く。そのステップは目にも留まらぬ速さだ。

フラメンコの発祥はスペイン南部アンダルシア地方である。しかしマドリードこそが一流のアーティスト(そう呼ぶにふさわしい)が集まるフラメンコの都なのだ。嘆きの旋律とパルマ(手拍子)、悲しみと苦悩の表情、ほとばしる情熱の踊り。歯切れよくギターが鳴り響き、すべてがひとつとなる。ジプシーの魂の叫びは芸術にまで昇華した。ここはそれを堪能できる街である。

残念なことに、老舗タブラオのひとつ「ビジャローサ」が新型コロナウイルスの影響で昨年の初めに閉店してしまった。タイル画の外壁が美しい店である。このコロナ禍が一日でも早く終息し、彼らの表現の場が再び戻ることを願わずにはいられない。

「カフェ・デ・チニータス」でフラメンコを堪能。コロナ禍の現在は休業中


タパスつまみにビール


スペインでの楽しみのひとつはバルめぐりだ。バルは、立ち飲み居酒屋のようでもあるし、カフェとも言える。朝食もとれるし、夜遅くまでお酒も楽しめる。出勤前にチュロスをチョコラーテに浸して食べているOLもいる。

カウンターにはお店自慢の小皿料理、タパスが並ぶ。手頃な価格の地元グルメだ。それをつまみにカウンターでワインやビールを飲みながら会話を楽しむ。

プエルタ・デル・ソルやマヨール広場周辺、あちらこちらにバルがある。はしご酒が好きならサン・ミゲル市場の南にあるカバ・バッハ通りへ行くのもいい。50軒ものバルが並んでいて、地元料理のトルティージャやピンチョスも味わえる。

お店に入ったら「オラ」と店員に声をかけよう。けんかを売っているわけではない。「こんにちは」という意味だ。「カーニャポルファボー」。生ビールを注文する。コクのあるスペイン伝統の生ハム「ハモン・セラーノ」がよく合う。スペイン語がわからなくても食べたい小皿料理を指さしで注文しよう。一品だけ食べて他に移るのもいいし、気に入れば他の小皿も味わいたい。スペインのバルは懐にやさしい。沖縄でもせんべろなるものがはやっているが、スペインではバルが庶民の味方だ。

「ハポネス(日本人)?」地元っ子が声をかけてくる。「シー、ハポネス(そう)」。
僕がキョロキョロしているせいかもしれない。ただ日本には興味があるようだ。話が弾んでビールをおごられたことも度々だ。「イチャリバ チョーデー」
スペイン人にはウチナーンチュと通じるものがある。人とのふれあい、それが旅の醍醐味だ。「カーニャ!、カーニャ!」 
調子に乗り過ぎてビールが止まらない。マドリードの夜は長い。



執筆者
やまうち・なおゆき/沖縄市出身。

米国留学より帰国後、米国商社勤務を経て1995年、スペインタイル総代理店「(有)パンテックコーポレーション」を設立。趣味は釣りと音楽、1950~60年代のジャズレコードの鑑賞、録音当時の力強く感動的な音をよみがえらせるべく追求。

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